a long walk

見つけてもそっとしておいてください嘘しか書いてません

年忘れ

 

年末だし9月22日より前の記憶は,忘れてしまおうと言われた.

平和的でとても良い提案だと思った.

好きだと思った.

 

裏腹に,忘れようと思えば思うほど,どんな毎日を過ごしていたかに思いを馳せてしまう.浴室.

 

***

 

ビリヤード場でのアルバイトを週に3日していた.土曜日がシフトの時は24時に退勤した後,朝まで常連のお客さんと球をついていた.

疲れたら午前3時ごろにお客さんの車で送ってもらった.

そのお客さんが恋人になるまでに,あまり時間はかからなかった.

アルバイトがない日は,その人と,美味しいものを食べたり弾丸で泊りの旅行に行ったりした.気まぐれで無茶なデートに付き合わされていたが,サプライズみたいだと喜んでいた.お金も車もあった.

大学は週に2日,どちらも2限だけで今と変わらない.

ビリヤードの試合にも復帰した.モチベが上がり練習にも精が出たが,例の恋人は私の男性との関わりが増えるという理由でよく思っていなかった.

恋人と喧嘩ばかりした.自分では到底理解も予想もできないことが原因となる.

悩み,眠れなくなり髪も抜けた.

 

破局して,夏休みになった.

卒業論文を固め始めた.

友達との遊びの予定がない日は,5時間ほど図書館で作業し,終わった後はバイト先のビリヤード場に行った.夜中まで2,3時間練習した.

破局したのに,車で送ってもらった.いつも,車から降りる時はやっぱりどうしても好きで,忘れられなくて,卒業後会社も数年ですぐにやめて資格をとってアパートの掃除とか事務所で作業を手伝ったりするから,やり直そうと懇願した.毎回断られた.私のことはもう全く恋愛対象として見れないと言われた.しつこく電話もしていたが,そのうち出てくれなくなった.

部屋に戻って泣く.布団に入っても朝5時くらいになって,すっかり目が覚めて寝れないので,映画や連続ドラマをスマホの小さい画面で見ながら,気づいたら浅い眠りに落ちるということを繰り返した.

そんなしょうもないことのループに飽きた頃に,旅行を入れた.一人旅.

山口,岡山,神戸に行った.身内とタイにも.友達グループと名古屋と伊勢にも行った.

夜遅くにバイト先に行くのをやめた.昼間に行き,1時間ほど練習をしてその後図書館に行き,作業が終われば一人で映画館に行った.美術館にも.季節が良かったので,六義園舎人公園も散歩した.新しいカフェで紅茶シフォンケーキを食べたりした.

友達ともそこそこ遊んだ.男性と数回デートもした.あまり楽しくなかった.自分がまだ立ち直っていないことにうっすら気付き,うんざりした.

一人で出かけない日は,部屋で本や漫画を読んだりブログを書いたりバチェラー2をひたすら観たりした.自室にいる時は卒論を進めることができない.

 

***

 

彼は,私といる時間はあくまで「彼女といる時間」として定義されており,私といる時間が「一人でいる時間」を圧迫してきて,ちょっと苦しい時があるらしい.

私は,とてもネガティブなことを言ってしまうと,過ごしているあらゆる時間は死ぬまでの暇つぶしであり,生きてることは私にとってそんなに良いことじゃないのだ.じゃあ,時間の潰し方として,早くすぎることと豊かさを付与してくれることを重視するので,その2面では,「一人でいる時間」より「恋人といる時間」の方が優れていると思う.不等号で表すと,恋人といる時間≧一人でいる時間>>友達といる時間>>>>興味のない相手と過ごす時間みたいなイメージである.そしてこれはあくまで私の理想の式であって,この理想に固執するあまりに,常連のお客さんとの関係が最後の方でかなりみっともないことになってたことも否めない.ただ,9月22日以降は,この式にかなった過ごし方ができているので,圧迫という概念がない.でも彼の言わんとすることもわからないでもない.

そんなことを話していると,また,彼は私の交友関係が狭まっていくことを心配しそうだ.

 

***

 

彼と会話するといつも,想像以上に他人への配慮と優しさに溢れていることが言葉の節々から感じ取られて,胸が詰まる.

すごく,見習おうと思う.

私は,自分がそこそこ賢いことを知っていて傲慢なので,今まで私の言動に対して指図をしてきたやつの言い分に納得したことが一度としてなかった.親でさえも.

 

相手の方が馬鹿なのかもしれない,思考の幅や深さが足りないのかもしれないと思うコミュニケーションがあまりに多くてうんざりしてきた.ただ,その度に自分も誰かにそう思われていそうだとかいう強迫観念はある.

彼とはそういうことが全くない.

しかし,配慮と優しさに溢れていると思って油断していたら,時折とても冷たく怖いことを言う.他人に対しても,自己に対する態度と同様に厳しい側面がある.

そうすると,私は,まだよくわかっていないところが多いやと思って,恐怖と心配で眠れなくなったりする.

そんな夜でさえもほんとうは楽しい.